東大阪市職員労働組合
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方針と政策

中核市移行問題についての市職労の立場と要求

2004年04月28日

「自治体リストラ」推進のもとでの移行は、市民サービス低下の危険性


T.はじめに


 東大阪市は来年4月から「中核市」移行をめざし、国に申し出る手続きとして、28日から臨時議会を開き、30日に議決を得ようとしている。
 市職労は、当局がすすめる「自治体リストラ」推進のもとでの中核市移行は、市民サービス低下の危険性が極めて大きいと考える。真の市民サービス拡充めざす対策と市民・職員の合意の形成へ、市職労として中核市移行についての立場と要求を明らかにする。


U.中核市の概要


「中核市」制度は、1994(平成6)年の地方自治法改正で創設。都道府県の事務をより住民に身近な自治体で行うことを標榜して市に委譲する制度。
 中核市の条件は、人口30万人以上でかつ面積が100平方キロメートル以上だったので東大阪市(62平方キロメートル)は該当しなかったが、2002(平成14)年4月に人口50万人以上であれば面積を問わないことに要件が緩和されたので、東大阪市が中核市対象となった。
中核市は、都道府県から市への権限委譲が一番多い「政令指定都市」(大阪市など全国13市)に次ぐ制度。府内では堺・高槻についで東大阪が3番目、全国では35市が政府から中核市指定を受けている。このほか、中核市に次ぐ制度として「特例市」(豊中、吹田、茨木、枚方、寝屋川、八尾、岸和田の7市。全国で40市)制度がある。
東大阪市が中核市になると大阪府から委譲される事務の項目は、@民生行政456件、A都市計画・建設行政446件、B環境行政125件、C保健衛生行政72件、D産業経済行政41件、E文教行政11件、Fその他6件、合計1157件となっている。
市当局は臨時議会用資料「中核市への移行について」の中で、「中核市移行によるメリット」として、@市民に身近な行政が実現される、A行政サービスの効率化が図られるようになる、Bきめ細かな行政サービスが提供できるようになる、C独自のまちづくりを展開しやすくなる、D市全体の活性化につながることが期待される、の5点をあげている。


V.問題点


市職労は、中核市移行による大阪府からの一定の権限委譲が有効に活用されれば、市民サービスの向上やまちづくりが前進する可能性があることを否定するものではない。しかし、財源や職員体制など必要な条件が確保されなければ、府から移管される業務にとどまらず、広い行政分野で市民サービスの後退などが生じる危険性がある。メリットがデメリットに転化する場合もあることも否定できないと考える。

1.不可欠な「市民サービス」の視点からの移管業務の詳細な検討
当局が示す5点のメリットは、中核市連絡会パンフレットが示す4項目に東大阪独自に@を付加したものだが、記者会見では「身体障害者手帳の交付が45日から30日に短縮される」などをサービス向上の具体例としている。事務処理時間の短縮などが実現すればそれ自体は評価すべきことだが、その他のメリットは極めて抽象的となっている。
 要約すれば「市民サービスの向上」と「独自のまちづくり」の2点がメリットとして強調されている。これらのキーワードは、中核市の権限として実施・実現されるものもあるが、中核市でなくてもできるもの、やらなくてはならないものもある。
逆に中核市になって財政負担が増え、事務委譲を機に市民サービスが低下したり、切り捨てられたりすることがないのか。もしそんなことがおこれば本末転倒となる。移管に伴う財源や体制確保とともに、「市民サービス」の視点からの詳細な検討が不可欠である。

2.財源確保に不安。新たな財政悪化の危惧も
「30億円の負担増は交付税の増額措置で対応できる」と当局が説明しているが、小泉内閣の「三位一体の改革」(@国庫補助負担金の廃止・削減、A地方交付税の削減、B地方自治体への税源委譲、の3つを一体で行うという方針。実際は@Aの削減が先行して全体で3兆9000億円マイナス、Bの税源委譲はわずか4700億円。東大阪も約26億円マイナス)の動向から、当局の見込みどおりに継続されることにはならないのではとの危惧が指摘されている。しかも、長期不況による税収の大幅な落ち込みや府独自の上乗せ施策にかかわる財源確保など「心配ない」とする根拠はない。「2階へあげておいてはしごをはずす」のが政府のやり方であり信用することはできない。東京の八王子市は、対象市の中で唯一、中核市移行を申し出ていない。移行による財政負担増をどうするのか「東京都と協議中」が理由となっている。

3.大きい、職員削減による市民サービス低下の危険性
中核市になって、住民サービスとともに業務量がどうなるのかは職場にとって重要問題となる。中核市移行を前にした今年度、当局は当初計画(平成15年度〜20年度)の6年間で496人の職員を削減するとしていたものをさらに100人上積みを強行した。
この4月には150人が削減され、職場の混乱が続いている。「仕事が1ヵ月遅れている」という職場も出ている。すでに4月から3名(今後も含め全体で7名)が事務委譲にむけて3カ月から1年間の予定で大阪府に派遣されている。しかし当局は、移管事務が集中する健康福祉部ですら5人の削減を行なった。ここに1157項目もの大阪府の事務が健康福祉部・建設局を中心に各部局にやってくる。
しかし、24日の新聞報道によると当局は、「安易な職員の増員などはできない。組織の見直しなどを考えていきたい」(松見市長)、「職員11人分の仕事が増えるものの、原則として配置転換で対応する考えだ」としている。よって事務委譲は関係部局だけでなく、庁内すべての部局の組織機構改革や人員削減として波及する。中核市移行による市民サービス低下は、当該部局とともに、全庁的に拡大・加速される危険性がきわめて大きい。
現場では市民ニーズ・業務量が増加し、その内容も高度・複雑化する一方、職員削減により、総合庁舎は土日もほとんどのフロアで休日出勤が続いている。「迅速できめ細かい市民サービスが(中核市で)可能になる」(市長)のは、制度・権限の民主的な運用とそれを支える職員の奮闘が結合されるのが前提であって、職員の努力・善意に当局があぐらをかいているのが現状である。職員の感情を逆なでする市長の発言と態度は、次の市長選にむけての「中核市」のステータス確保が優先され、職員の願いは後景に追いやられている。
また、当局は「10.02人分の仕事であり11人で対応する」と試算しているが、これは大阪府資料をうのみにしており、府下全域を業務の守備範囲にしている府のスケールメリットも考慮せず、年休も特休も取得せずの計算であり、身近で親身な市民対応が求められる職場実態とまったく合致しない机上の数字である。例えば、東大阪で「必要人員は4人」と算定しているある業務は、高槻市では6人で行っており、堺市のある担当者も「そんな体制では、せっかく委譲された権限が市民のために有効に活用できない」と感想をのべている。

4.中核市移行を機に加速が危惧される労働条件の改悪
総務省は中核市移行を申し出る市に対し、「中核市移行に係る給与制度・運用に関する調」の提出を求めている。その項目は、@ラスパイレス指数の状況、A給料表の状況など、Bわたりの状況、C初任給基準の状況、D調整手当の状況、E退職手当の状況、F高齢層職員の昇給の状況、G特殊勤務手当の支給状況、Hその他、となっている。国家公務員の制度との相違点の是正(改悪)を今後要求してくることは容易に予想される。堺市も中核市移行と前後して賃金改悪が加速された。“仕事は税源委譲なしの「地方分権」、民主的な行政や賃金・労働条件には国家統制”につながる国からの不当な圧力は排除されるべきである。

5.「絵にかいた餅」になりかねない「独自のまちづくり」
「独自のまちづくり」についても、委譲される権限のみで自動的にまちづくりが大きく前進するものではない。土地利用の計画や法整備をはじめ必要な条件整備や推進するための市民合意や職員体制の確保などが不可欠であり、それを抜きにした「まちづくり」は絵にかいた餅になりかねない。

6.「意識改革」が必要なのは当局の側
さらに当局は職員に中核市移行を契機にいっそうの「意識改革」を求めている。しかし当局の方は賃下げの一方的な強行にもみられるように一貫して職員無視の「意識」を改革していない。中核市問題も例外ではなく、充分な情報の提供や意見聴取もない市民と同じく、結果だけを押し付けられる存在となっている。「庁内外で中核市移行に向けた機運が盛り上がらない」という声がきかれるのも当然であるが、市民サービスなどに直結するものであり、それだけではすまされない。

 このように、当局がすすめる「自治体リストラ」推進のもとでの中核市移行は、市民サービス低下の危険性が極めて大きく、職員の奮闘だけでこれらの問題点・不安要素を解消しようとする当局の意図は改められるべきである。


W.市職労の態度と今後の運動について


〜真の市民サービス拡充めざす対策と市民・職員の合意を
1.移行のすすめ方について
高槻市は、市議会に中核市問題の特別委員会を設置して2年間議論したのちに議決し、昨年4月に中核市に移行した。それでも賛否両論が最後まで出された。
一方で東大阪は、再来年の市長選をにらんで、来年4月移行を「結論ありき」としてしゃにむに推進しようとするもの。市政だよりにはただの一度も中核市の特集はされておらず、市民合意どころか情報すら皆無の中で移行が決定されようとしている。市職労への説明も、繰り返し要求してきたにもかかわらず、直前のたった1回きりとなっている。「三位一体改革」の方向も地方自治体当局の期待とは逆行しようとしている。
時間をかけて職員合意・市民合意を形成すべきである。

2.市職労の態度と要求
市職労は、中核市の制度と運用の問題点、東大阪で中核市の「メリット」が発揮できる条件があるのかなど検討してきた。制度そのものにはいくつかの積極面があることは否定できないが、臨時議会を迎える時点での判断として、東大阪市が移行するには少なくない問題点があると言わざるを得ない。
よって市職労は、当局に対し次の8点を要求する。直ちに労使交渉・協議を行い、労使合意を図って、解決・対応するよう求めるものである。
■市当局は、東大阪自身の問題を解決すること
@市民・職員への徹底した情報公開と内容の周知をすすめ、真の市民サービス拡充と計画的で特徴あるまちづくりめざす納得と合意を時間をかけて図ること。
A市民のくらしと福祉を守るための施策を、中核市移行を機に絶対に低下させないこと。
B職場会議・研修を強めること。委譲事務をどうするのか職場での民主的な討論を保障すること。
C職員削減計画を見直し、「住民サービス向上」のために必要な職員の採用、配置を行なうこと。
D中核市移行を機にした賃金・労働条件の改悪を行わないこと。一方的な賃下げ強行などをあらため、直ちに労使合意で解決すること。
■市当局は、政府・大阪府へ要求を強めること
E政府に対して、権限とともに充分な財源の委譲を求めること。「三位一体改革」なる削減押し付けへの毅然とした態度・姿勢を明確にし、その中止を求めること。また、全国の自治体と連帯した運動で地方財政の拡充をはかること。
F政府に対して、中核市移行を機にした行政施策や職員の賃金・労働条件への不当な介入・干渉を行わないよう求めること。
G大阪府に対し、府単独事業の改悪・廃止を許さず、府民の暮らし・福祉を守る行政責任を果たすよう求めること。府単独事業分の財源保障を求めること。

(市職労としての今後の取り組み)
@検討組織を継続していく。先行市の功罪の検証をすすめる。地域の諸団体との意見交換をすすめる。
A職場体制や財源など、東大阪で今後起きる問題について職場からの意見・要求を取り上げ、当局に要求し、解決を迫る。
B財源確保をはじめとする制度の民主化などについて、政府や大阪府にむけた要求運動をすすめていく。

以上


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