東大阪市職員労働組合
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方針と政策

上下水道局統合庁舎建設問題で、東大阪市政研究会が「提言」を発表しました。

2006年09月06日

7月に行われた市長選挙では、「税金のムダづかいを改めて、市民のくらしを守ってほしい」が大きな世論となりました。その中で、上下水道局統合庁舎の建設も市民の大きな関心を呼び起こし、明るい東大阪をつくる会が実施した市政アンケート(1800人以上が回答)では、前市政下でつくられた建設計画の見直しを求める声が95%に達し、「市民参加で見直します」と公約した長尾市長が当選しました。

東大阪市政研究会は、改めてこれまでの建設計画を分析すると同時に、これからの上下水道事業における課題などの検討を行った結果、統合庁舎建設による市民生活への影響は上下水道事業にとどまらないものであり、現計画は白紙に戻し、統合庁舎建設でなく現庁舎網を活用した上下水道事業の拡充をめざすべきとの結論に達し、8月25日に市民シンポジウムの議論も踏まえて、9月6日、「提言」として長尾市長に提出しました。

統合庁舎建設でなく
現庁舎網を活用した上下水道事業の拡充を

− 上下水道局統合庁舎建設計画見直しへの提言 −

2006年9月 東大阪市政研究会

1.ずさんで市民に多大な負担を強いる現計画は白紙に

統合庁舎建設の概要を「東大阪市上下水道局統合庁舎基本構想」(平成18年1月)からみてみると、本庁に隣接したクリエイション・コア西側の府有地6,000uを買い取り、5,000uの庁舎と駐車場等を建設する計画で、建設費は23億8,240万円程度(内訳は設計委託費・概算建設費・用地取得費)を見込み、平成18年9月着工・平成20年3月竣工の予定です。ところがこれに充てる財源となると、はっきりしているのは水道会計の建設改良積立金5億円だけで、残りは「起債等で18億8,240万円を想定しております」「建設にかかる費用をはじめ資金の調達方法、将来の財政予測等については、市民の理解を得られるよう、更に詳細な検討を行ってまいります」としている程度です。なお、現水道庁舎を撤去し用地を売却できれば8億3,600万円が見込まれるので、「水道会計の起債償還に充てます」としています。このように、「起債等」の「等」の中身が曖昧なうえ、唯一示している水道用地の売却についても額も含めてあくまでも希望にすぎません。現に水道庁舎のすぐそばにあった元労働会館の用地は売却されるまでに11年を要しています。「とにかく建ててしまって、あとから帳尻を合わせればよい」とでも言わんばかりの資金計画です。あまりにも安易であり、ずさん過ぎます。また、下水道会計については、すでに本庁に入るための起債11億1,000万円と旧下水道庁舎の起債残額2億5,000万円、合計13億6,000万円にのぼる起債を抱えています。このうえさらに、統合庁舎建設のための支出を重ねれば、明らかな二重投資となります。市議会では、一般会計からの繰入金で下水道部の起債を繰り上げ償還する旨の答弁がおこなわれていますが、これは、「統合庁舎で新たな市民負担は生じない」としてきたことに明らかに反しており、計画がすでに破綻していることのあらわれにほかなりません。

もし、この計画どおりに統合庁舎が建設されてしまえば、30億円を超える市民の後年度負担が生じることになり、上下水道の料金値上げや、一般施策へのシワ寄せなど市民生活に悪影響を及ぼしかねません。このような無謀な計画は白紙に戻して、抜本的に再検討することを見直しの出発点に据えなければなりません。

2.統合庁舎の建設よりも将来への備えを

大きな市民負担をともなう統合庁舎建設をすすめる前に、まず上下水道事業全体の現状と課題を検討する必要があります。「水道ビジョン」(厚生労働省健康局)は、「21世紀初頭の我が国は、20世紀に整備された水道施設の多くが老朽化しつつあり、その更新が課題となっている」と指摘しています。本市も同様で、昭和42年の東大阪市発足以降の10年間(30年〜40年前)で延長された導配水管だけでも、約13万4,000メートルに及びます。浄配水場(?水走・菱屋西・上小阪にある)や配水池の整備事業がおこなわれていますが、必ずしも老朽化の速度に追いついていません。施設の耐震化については、まだまだこれからという段階です。そこで「前期基本計画」(平成15年度〜平成22年)では、「今後は、多様化する市民ニーズに対処するため、配水施設の整備や更新等を推進するとともに維持管理体制を強化するほか、基幹施設の耐震化整備、直結増圧給水等の導入をおこなうとともに、計画的、効率的な経営を確立し、引き続き健全財政の維持に努めることが望まれます」と「現況と課題」を明らかにしています。また、下水道事業も「建設」から「維持管理」への移行期を迎え、同基本計画「第2次実施計画」(平成17年度〜19年度)において、「下水道機能の有効利用と維持管理」として、「老朽化や損傷による浸水被害、道路陥没、土壌汚染等を防止する」としています。

以上のように、本市の上下水道事業はこれから、かつて経験したことのない施設更新の時代を迎えます。したがって、庁舎整備の費用は必要最小限に抑え、財源は施設更新や、料金改定等による負担増をできる限り回避するために充てるというのが至当な判断ではないでしょうか。具体的には、「現水道庁舎を耐震化・バリアフリー化し、現庁舎網による拡充を図る」ことを提言します。これなら、財政的にはいまある5億円の積立金の水準で対応が可能であり、あらたな市民負担をともなうこともありません。

3.統合庁舎でなくても「三つの向上」は達成できます

そもそも統合庁舎建設の計画が持ち上がってきたのは、平成17年4月1日の中核市移行にあわせて行われた水道局と下水道部の組織統合によって、上下水道局が設置されたことによるものですが、その意義として掲げられた「市民サービスの向上」「経営効率の向上」「危機管理体制の向上」を達成するためにも統合庁舎が必要とされているのです。

しかし、水道局と下水道部の組織統合そのものが、「中核市移行にあわせる」を至上命題としてトップダウンで強行された、まともな準備や検討抜きの安易でずさんなものでした。その結果、「形だけの統合」となって「成果がでない」のであって、「上下水道統合の成果を発揮するためには、統合庁舎建設を」と突き進むのは本末転倒の大きな誤りです。現庁舎網を活用しても「三つの意義」に沿った拡充を図ることは充分可能ですし、本筋に立って真剣に検討すれば、さらなる成果を期待できます。

(1) 「危機管理体制の向上」は本庁建設の教訓ふまえ分散庁舎で

まず「危機管理体制の向上」です。阪神大震災の際に、「神戸市旧庁舎の6階部分が崩れてしまったため、その崩れた6階部分だけでなく、旧庁舎全体が使用不能になってしまい、その中に神戸市水道局や建設局など、災害復興に重要なセクションがあり、急遽近くのビルの空き室を借りて、移転することになったが、復興のための関係資料の取扱いに大変支障が生じた」ことが報告されています。こうした教訓も踏まえ、本庁建設時に長尾市長のもとで計画が見直され、本庁への水道局の入庁が見送られました。ところが、建設予定地であるクリエイション・コア西側では、本庁と同一敷地内ともいえる位置であるため、同様の被災状況が想定され、相互に補完しあうことができません。阪神大震災の教訓からも現水道庁舎の耐震化が災害時の備えとして適切です。

仮に本市が大きな震災などにみまわれた場合、中央環状線・築港枚岡線(中央大通り)などの幹線道路で交通大渋滞が発生し、地域が寸断されることが予想されます。そんな時、現水道局庁舎がなければ、市の南部地域に防災拠点を設けることが困難となります。救援物資の備蓄の観点から見ても「地域分散」という本市の方針とも矛盾するものです。防災複数拠点化の観点からあえて水道局を本庁舎に収容せず分散庁舎とした本庁建設の教訓をふまえるべきです。

(2) 「市民サービスの向上」は、市民の身近なところへ窓口をひろげて

次に、とりわけ、統合庁舎建設基本方針でも掲げられた「窓口サービスの向上」についてです。単に窓口の箇所数を比較しただけでも、統合庁舎建設では明らかに減少します。現行、上下水道局の窓口は、@水道庁舎(八戸ノ里)、A本庁の下水道部及び水道連絡室(荒本)、B旭町庁舎敷地内の東連絡所(瓢箪山)の3カ所です。ところが、統合庁舎建設によって水道庁舎がなくなり、事実上2カ所になってしまいます。しかも、本局機能を担い、東大阪市の大動脈である近鉄奈良線の沿線にある水道庁舎がなくなることは、大幅な後退となります。「窓口サービス向上」のためには、市民に身近なところへ窓口をひろげていくことが必要であり、例えば、行政サービスセンターに上下水道局の窓口を設けるなど、現在の3カ所から増やしていくことを具体化すべきです。一方、業務見直しをおこない、本庁7階の水道連絡室を下水道部に統合すれば、窓口の重複を解消でき、経費節減にもつながります。

(3) 「経営効率の向上」は職員の英知を引き出してこそ

「経営効率の向上」も統合庁舎を建設しなくても可能です。現計画の中では、統合庁舎建設で重複している業務を一元化することによって、職員9人分×800万円×30年間で21億6,000万円の人件費を削減できるので、起債の償還は可能であるし、費用面でも市民負担は生じないかのような説明があります。あたかも庁舎を統合するだけで、業務が一元化でき人件費が減らせるようなことを言っています。しかし、実際はそんな単純なものではありません。まず、昭和51年度からおこなわれている水道料金と下水道使用料の一括徴収に代表されているように、もともと上下水道の業務の多くがすでに一元化されています。加えて最近でも、臨時栓に関する業務の改善(料金徴収と精算の一元化等)や、上下水道局となった平成17年度からは減免事務の改善(所得調査や集合住宅入居者に関する事務処理の一元化等)がおこなわれています。情報もオンライン端末機の設置によって、多くが共有化されています。このように、業務の一元化は現場で担当者が話し合い、知恵をしぼってこそできるものです。現にいまあげた改善は、現行の分散庁舎の下でおこなわれたものであり、このことからも庁舎統合=業務の一元化=人件費削減とならないことは明らかです。「経営効率の向上」のカギは、庁舎の形態にあるのではなく、職員の英知をどれだけ引き出すかにあります。上下水道の組織統合にあたっても、統合庁舎建設計画においても、一番なおざりにされてきたことがもっとも重要なのです。上下水道局としてどんな業務をどのような組織と体制でおこなうのか、本格的な検討を早急におこない具体策をまとめることが、内実のともなった「経営効率の向上」につながるのです。

4.築33年で解体は“もったいない”〜抜本的な見直しは可能

以上のように、上下水道統合の効果をあげることは、現庁舎網の活用で充分可能であり、ずさんで市民に多大な負担を強いる統合庁舎建設は行うべきではありません。大切なことは、トップダウンよる強引な組織統合や無計画で唐突な庁舎建設の押し付けではなく、上下水道事業が全体としてかかえている課題を総合的・全面的に明らかにし、職員の英知を結集して問題の解決にあたることです。

もともと、いまある水道会計の建設改良積立金5億円は、現水道庁舎の耐震化・バリアフリー化のために年次的に積み立てられたものです。これを目的どおり・計画どおりに充てようというのが、本提言でもあります。築33年とはいえ、耐震補強をすればまだまだ使えるであろう現水道庁舎を一気に取り壊してしまうのは、いかにももったいない話です。築後年数を経ているのは、庁舎だけでなく施設全般であり長期的な整備計画を策定する時期にきています。平成17年度から3年間かけて「上下水道事業の中長期計画」が策定されようとしています。耐震補強したあとの将来的な庁舎整備をどのように考えるのか、計画の中に盛り込むこともできるのではないでしょうか。

また、全市的には永和図書館、学校施設をはじめ市民が日常的に利用している施設で老朽化にともなう改築・改修、耐震化などが急がれる施設も少なくありません。市民の安心・安全、教育環境充実など総合的な視点からの施設整備がもとめられています。

市長選挙の結果をうけ、庁舎建設計画は現在中断しています。これまでに実際に予算化されたのは設計委託料の5,640万円だけであり、用地買収費用や建設費の予算化はストップしています。抜本的な見直しは可能であり、本提言が大いに活用されることを切望します


※東大阪市政研究会

東大阪市職労、東部民商、布施民商、日本共産党東大阪市議団、大阪自治体問題研究所の5団体を中心に構成。全国有数の中小企業集積のまち・東大阪の市民の暮らしや営業の実態、まちづくりや市政の現状の分析をとおして、とりわけ市財政、高齢者、子育て・教育、街づくり、地域経済、国民健康保険などの分野にスポットをあてながら、市民の願いを実現するための市政改革の方向や具体的方策を探っている。6月にパンフレットを発行。6月・8月にはシンポジウムも開催。代表は中山徹大阪自治体問題研究所副理事長。


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